Article

企業レジリエンスの新潮流:ミドル層強化が組織の危機耐性を左右する時代へ

企業のミドル層を対象とした「Wellness Growth Program」が始動した。このプログラムは、組織の中核を担う中間管理職のレジリエンス向上に特化している点が特徴だ。従来のメンタルヘルス施策とは一線を画し、個人の回復力そのものを高める設計となっている。

参考: ミドルマネージャーのレジリエンスを高める「Wellness Growth Program」を提供開始(tv-tokyo.co.jp)

分析・見解

このプログラムが注目すべき理由は、企業のレジリエンス戦略における「ボトルネック」を正確に捉えている点にある。過去10年の組織危機対応を振り返ると、BCPやマニュアルが整備されていても、実際の危機局面では「誰が判断し、誰が動くか」が混乱の焦点となってきた。2020年のパンデミック初期、多くの企業で意思決定の遅延が発生したが、その主因は経営層と現場の間で板挟みになったミドル層の疲弊だった。

興味深いのは、プログラムが「成長」という言葉を冠している点だ。従来の職場メンタルヘルスは「予防」「治療」の文脈で語られがちだったが、レジリエンスを筋力のように鍛えられる能力と位置づけている。これは災害心理学の知見と一致する。阪神淡路大震災の追跡調査では、危機を経験した個人が適切な振り返りと訓練を経ることで、次の危機への耐性が向上することが確認されている。

企業の危機対応力は、結局のところ「その場にいる人間の判断力」に依存する。自動化やAI支援が進んでも、想定外の事態で最終判断を下すのは人だ。ミドルマネージャーは経営方針を現場に翻訳し、現場の状況を経営層に伝える要の存在であり、この層が機能不全に陥ると組織全体が麻痺する。今回のプログラムは、この認識が企業の人的資本投資の主流になりつつある兆しと言える。

[PR]

ビジネスへの影響

実務的な示唆は二つある。一つは、BCP訓練の設計を見直す時期にあるということだ。シナリオベースの避難訓練や通信訓練に加え、ミドル層が心理的プレッシャー下で冷静な判断を維持できるかを試す演習が必要になる。もう一つは、人材配置における「レジリエンス指標」の導入だ。危機対応チームやプロジェクトリーダーを選ぶ際、スキルや経験だけでなく、ストレス耐性や回復力を評価基準に加える企業が増えるだろう。ウェルネスへの投資を福利厚生ではなく、組織のリスクマネジメント戦略として位置づける視点が求められている。

関連記事