ニュースの概要
Forbes JAPANが紹介した2026年の職場・従業員調査では、多くの従業員が職場の変化に対応する力を自分に備わっていると捉える一方、3分の1を超える人が、勤務先から十分な支援を受けていないと答えました。変化が続く時代には、本人の気持ちの持ちようだけで適応を求めても限界があります。記事は、心身の健康や睡眠、栄養、ストレスへの対処、周囲とのつながりを含めて、企業が従業員の回復力を支える必要性を示しています。
引用元: 職場の変化に対応する従業員レジリエンス、企業の支援不足が課題に(Forbes JAPAN)
分析・見解
個人の適応力と組織の支援は別々に測る
従業員が「自分は変化に対応できる」と感じていても、それだけで職場が健全だとは言い切れない。調査で3分の1を超える人が支援不足を訴えた点は、本人の自信と、組織が用意する支援との間にずれがあることを示す。自力で乗り切る人が多い職場ほど、負担が見えにくくなる場合もある。欠勤や退職が表面化するまで対策を遅らせれば、経験のある人材を失うだけでなく、残った社員への業務集中も招く。
レジリエンスは、逆境に耐え続ける力ではない。負荷に気づき、必要な助けを得て、回復しながら仕事を続けられる状態と捉えるべきだ。従業員に「もっと前向きに」と求めるだけでは、業務量や人員配置などの原因を個人の問題に置き換えてしまう。
睡眠やつながりまで含めて回復力を捉える
睡眠、栄養、運動、ストレスへの対処、職場での人間関係は、それぞれ別の施策に見える。しかし実際には、睡眠不足が集中力を下げ、ミスや残業を増やし、その残業がさらに睡眠を削るというように、互いに影響する。健康講座だけを実施しても、休めない働き方が変わらなければ効果は限られる。ウェルネス(心身の健康を保つ取り組み)は、福利厚生の追加ではなく、仕事の設計と一体で考える必要がある。
一方、健康情報の収集には慎重さが欠かせない。睡眠時間やストレスの記録を人事評価に使えば、社員が正直に回答しなくなるおそれがある。個人を特定しない集計を基本にし、利用目的や閲覧範囲を明示することが、支援への信頼を守る条件となる。
変化の速さより回復時間の不足が負担を増やす
新しい道具や制度を導入するとき、組織は導入日や習熟度を管理しがちだ。しかし従業員には、旧手順と新手順を並行して扱う期間や、質問しながら慣れる時間が必要になる。変化の頻度が高く、説明や練習の余裕がない職場では、適応力のある人にも疲れがたまる。問題は変化そのものだけでなく、変化の後に立て直す時間を確保できるかにある。
管理職の役割も、励ますことだけではない。優先順位を整理し、止める仕事を決め、助けを求めやすくすることが重要だ。変革のたびに仕事を積み増すのではなく、何を減らすかまで決める組織は、従業員の適応を個人任せにしにくい。
支援の実効性は利用しやすさと職場の変化で測る
相談窓口や健康支援制度を設けても、利用方法が複雑だったり、利用すると評価に響くと思われたりすれば、制度は機能しない。利用件数だけで成否を判断するのも危うい。相談が増えたことは、問題の増加だけでなく、窓口への信頼が高まった結果かもしれない。匿名の意識調査、休暇や残業の傾向、部署ごとの離職状況などを合わせて見て、支援と職場運営の両方を点検したい。
今後は、健康施策を一律に配るだけでなく、勤務形態や職種の違いに応じて選べる支援が求められる。大切なのは、個人の情報を細かく監視することではない。どの仕事の進め方が負担を生み、どの変更が回復を助けたかを、プライバシーに配慮した形で学び、職場の仕組みに戻すことである。
ビジネスへの影響
施策を増やす前に負担の発生源を特定する
意思決定者は、相談窓口や健康講座を新設する前に、どの場面で負担が生じているかを確かめたい。短い匿名調査で、業務量の見通し、休憩の取りやすさ、変化の説明、相談のしやすさを尋ねる。部署や勤務形態で結果を分けると、全社平均では隠れる課題が見つかる。例えば、制度変更後に問い合わせや時間外労働が特定部署で増えていれば、個人の適応力を問う前に、手順書や教育時間、人員配置を見直す根拠になる。
対応策は原因に合わせる。仕事量が原因なら優先順位や締め切りを調整し、孤立が原因なら定期的な対話の機会を作る。健康上の相談には専門家につなぐ道を用意する。施策の効果は、参加人数だけでなく、休暇取得、残業、欠勤、定着の変化と、社員が支援を使いやすいと感じるかで確かめる。
管理職に「減らす判断」と相談を受ける力を持たせる
現場の管理職には、変化の目的と影響を説明する力に加え、新しい仕事を加えるときに何を止めるかを決める権限が必要だ。人事部門が制度を整えても、上司が休暇を取りにくくしたり、相談を弱さと見なしたりすれば、利用は進まない。相談内容を評価に結び付けないこと、緊急時の連絡先を明確にすることも、安心して助けを求められる環境づくりに欠かせない。
まず一つの部署で数か月試し、働き方と従業員の受け止め方を確認してから広げる方法が現実的だ。試行の際は、健康に関する個人情報を誰が扱うか、管理職に何が共有されるかを事前に示す。支援制度と業務の見直しを同時に進めれば、従業員の回復力を高めながら、欠勤や離職による人員の損失を抑える判断につなげられる。